本日、PASS Data Community SUMMIT 2023 / Ignite 2023 が開催され、SQL Server / Azure SQL の様々な Update が発表されましたのでまとめておこうと思います。
発表の全体については、次の情報から参照することができます。
Ignite 2023
- What’s new in SQL Server and Azure SQL: 2023 Year in Review
- Power what’s next with limitless relational databases from Azure
- Ignite 2023 Book of News
PASS Data Community SUMMIT 2023
- PASS Summit 2023 ? Microsoft Keynote ? Limitless growth, limitless opportunities: Data and innovation in an AI world
- PASS Summit 2023 ? Redgate Keynote ? The New Database Landscape ? Revealing Shifts and Charting the Next Horizon
- PASS Summit 2023 ? Community Keynote ? AIOps and ChatGPT ? Prepare to Ride the Next Wave
Contents
- 1 Azure SQL Database
- 1.1 Azure SQL Database Hyperscale の価格改定
- 1.2 Always Encrypted Secure Enclaves の一般提供開始
- 1.3 Azure SQL Database Hyperscale の新しいハードウェアサポートの追加 (プレビュー)
- 1.4 Azure SQL Database を使用したベクトル検索
- 1.5 ライセンスフリーのスタンバイレプリカ (プレビュー)
- 1.6 Azure Database Migration Service (DMS) の新しい UI
- 1.7 Microsoft Copilot for Azure を使用した SQL Database の運用支援
- 1.8 SSMS 19.2 で Azure SQL Database の拡張イベントのログの操作性の向上
- 1.9 Microsoft Fabric へのミラーリング
- 1.10 Azure Database Fleet Manager を使用したデータベースを抽象化した統合的な管理
- 2 Azure SQL Managed Instance
- 3 Synapse Analytics
- 4 Azure Arc enabled SQL Server
- 5 Azure Stack HCI
Azure SQL Database
Azure SQL Database Hyperscale の価格改定
Hyperscale のサービスレベルの価格改定が 2023/12/15 から開始され、OSS DB 相当の価格で利用ができるようになります。
コンピューティング / ストレージのコストが見直され、最大で現状より 35% コストを抑えて利用が可能となるようです。
上記の日以降は、価格表 や 料金計算ツール にも改定後の価格が反映されるようですが、現在公開されている情報では次のような考え方になるように見受けられます。
- コンピューティングコスト: SQL ライセンス部分が無くなりコンピューティングコストのみで利用可能 (現状よりコストが下がる)
- 2 vCore あたり $0.20/時間 の SQL Server ライセンスコストが発生しなくなり、コンピューティングの $0.185/vCore 時間で利用できるようになります。
- この考え方が OSS DB 相当となっている部分なのかと思います。
- ストレージコスト: 他の環境の合わせてコストを改定 (現状よりコストが上がる)
- 現状 $0.1/GB → $0.25/GB
新価格は 12/15 以降に作成されたデータベースに適用され、それより前に作成された環境については最長で 3 年間はコストの変更はなく既存の価格での利用となり、2026 年 12 月までに価格変更についての通知が行われるようです。
Always Encrypted Secure Enclaves の一般提供開始
- Always Encrypted with secure enclaves ? DC-series with up to 40 vCores now generally available
- VBS enclaves for Always Encrypted in Azure SQL Database now generally available
Intel SGX を搭載した DC シリーズの一般提供が開始され、Always Encrypted Secure Enclaves という列の暗号化機能をハードウェアのセキュリティ機能により実現することができるようになりました。
また、VBS を使用した Always Encrypted Secure Enclaves という暗号化機能の一般提供が開始されています。
VBS が利用できることで、DC シリーズの Intel SGX を搭載した環境以外でも Always Encrypted Secure Enclaves を使用することが可能となります。
これらの対応により幅広い環境で Always Encrypted Secure Enclaves を一般提供開始された機能として利用することができるようになりました。
Azure SQL Database Hyperscale の新しいハードウェアサポートの追加 (プレビュー)
- Announcing Public Preview of premium-series hardware for Azure SQL Database Hyperscale elastic pools
今までは Gen5 のハードウェアでの利用となっていましたが、さらに高性能なハードウェアとして、次の 2 種類のハードウェアが使用できるようになりました
これらのハードウェアを使用することで Gen5 より多い CPU コア / メモリサイズを確保することが可能となります。
Azure SQL Database を使用したベクトル検索
Azure SQL Database 側の実装としては、次の実装となります。
- Azure SQL Database を使用したインテリジェント アプリケーション
- Vector Similarity Search with Azure SQL database and OpenAI
SQL Database 単体でベクトル検索を実施するのではなく、sp_invoke_external_rest_endpoint
を使用して Azure OpenAI を呼び出すことで実現するという方法は従来から変更は無いようです。
Azure AI Search の 統合ベクター化 が Public Preview となり、SQL Database のデータを使用した統合ベクター化が新しい概念となるのではないでしょうか。
ライセンスフリーのスタンバイレプリカ (プレビュー)
Azure SQL Database は読み取り可能なレプリカを容易に作成することができます。
アクティブ Geo レプリケーションを作成する場合、レプリカはプライマリと同様のコストが発生します。
今回追加されたライセンスフリーのスタンバイレプリカを使用するとアクティブ Geo レプリケーションのレプリカのうち 1 台を読み取りを許可しない完全なスタンバイとすることで SQL ライセンスのコストを抑えることができます。(コンピューティングコストは発生)
Azure SQL Database のライセンスフリー スタンバイ レプリカ (プレビュー) を構成する に詳細が記載されていますが、設定可能なサービスレベルは vCore モデルとなり、DTU と Hyperscale ではサポートされていません。
Azure Database Migration Service (DMS) の新しい UI
DMS の UI が改善され、操作性が向上されました。
DMS を使用した移行方法は Azure Data Studio 用の Azure SQL Migration 拡張機能を使用してデータベースを移行する で解説が行われています。
Azure Data Studio の Azure SQL Migration の拡張機能を使用して DMS への設定投入を実施しますが、拡張機能バージョンが v1.5.0 となり新しい UI を使用することができるようになりました。
Microsoft Copilot for Azure を使用した SQL Database の運用支援
PASS の Keynote のデモで実施されたていた内容となるのですが、Azure Portal に組み込まれる Microsoft Copilot for Azure を SQL Database の運用支援で使用することができます。
Copilot のチャットに、現在発生している問題の解決方法を聞いてみることや、Azure ポータルのクエリエディターで Copilot を利用することで、指示した内容のクエリを Copilot に記載してもらうということが可能となります。
PASS のデモでは、クエリエディターで接続しているデータベースのスキーマを意識して CTE を使用したクエリが提示されていましたので、精度については期待できるものがあるかもしれませんね。
SSMS 19.2 で Azure SQL Database の拡張イベントのログの操作性の向上
今回のイベントで発表されたものではないですが、SSMS 19.2 の新機能として Azure SQL Database の拡張イベントのログの操作性が向上しています。
従来までは SSMS のオブジェクトエクスプローラーから拡張イベントのイベントファイルのツリーを選択して直接開くことができず、ファイルをダウンロードまたはクエリでログの内容を開く必要があったのですが、最新の SSMS では直接拡張イベントを開くことができるようになりました。
Microsoft Fabric へのミラーリング
Fabric へのリアルタイムデータレプリケーションの機能が今後使用することができるようになるようです。
現状、Synapse Link が該当する機能となりますが、これを Fabric に対しても実行することができるようになるのではないでしょうか。
SQL Database は読み取り専用のレプリカを容易に作成することができますが、これらのレプリカはプライマリからのデータ同期により作成がされるため、読み取りレプリカへのクエリがプライマリの処理効率に影響を与えるケースがあります。(逆のケースもあり、プライマリの処理が読み取りレプリカに影響を与えることもあります)
データミラーリングのような機能であれば、プライマリと独立したデータ同期により読み取りワークロードで使用できるデータストアを作成することができますので、ワークロードによっては効率的に活用できるケースが出てくるのではないでしょうか。
Azure Database Fleet Manager を使用したデータベースを抽象化した統合的な管理
新しい Azure のサービスとして、Azure Database Fleet Manager が追加されるようです。(今後数週間以内に Private Preview を開始)
Fleet / Fleetspace / Tier という階層構造でデータベースを中央管理できるように階層化し、必要となる性能目標に適した Tier を選択して、データベースを作成するというようなことができるようになるようです。
(Elastic Pool を使用した Tier やシングルデータベースを使用した Tier というような設定もできそうです)
Tier 毎 / 内のデータベースの状況 / 状態を統合的に確認 / 管理するということもできるようで、複数のデータベースを効率的に管理することができる新しいサービスが今後登場するようです。
Azure SQL Managed Instance
Managed Instance については、直近のアップデートがまとめられた情報が公開されていますので、この情報から全体を把握することができます。
2022 年 11 月機能ウェーブの一般提供開始
-
Announcing the General Availability of November 2022 Feature Wave for Azure SQL Managed Instance
- Announcing General Availability of Stop-Start capability for Azure SQL Managed Instance
- GA of DTC for Azure SQL Managed Instance
- Announcing General Availability of Zone Redundancy for Azure SQL Managed Instance Business Critical
昨年発表された、2022 年 11 月機能ウェーブが一般提供開始され、この機能改善で追加された様々な機能の一般提供が開始されています。
利用可能なサブスクリプションも増えており、Dev/Test 以外でも使用することができるようになりました。
2022 年 11 月 Azure SQL Managed Instance の機能ウェーブのロールアウト に記載されていますが、新規のインスタンスだけでなく、既存のインスタンスについても段階的に 2022 年 11 月機能ウェーブの環境に移行されていきます。
Business Critical の価格とパフォーマンスの柔軟性の向上
- Improved price/performance and flexibility in the Business Critical service tier in Azure SQL Manage
Business Critical のサービスレベルに対して様々な改善が行われています。
- CPU コア数に応じたストレージサイズの改善により低い CPU コア数でも大容量のストレージを利用可能
- Premium / メモリ最適化 Premium シリーズで選択可能な vCore 数の選択肢の増加
- 最大 16TB のストレージサポート
- 全リージョンで Premium / メモリ最適化 Premium シリーズをサポート
データベースコピーと移動の一般提供開始
Managed Instance 間でデータベースのコピーと移動を行う機能の一般提供が開始されました。
機能の詳細については データベースをコピーまたは移動する – Azure SQL Managed Instance で解説が行われており、ユースケースについても本ドキュメントに記載されています。
台帳テーブルの一般提供開始
Managed Instance で台帳テーブル (Ledger) の一般提供が開始されました。
台帳型テーブルにより、データの更新を厳密に管理することができるテーブルを作成することができます。
Premium シリーズで予約容量のサポート
Azure SQL Database Hyperscale / Managed Instance の Premium シリーズで予約容量 (リザーブドインスタンス) を使用することができるようになりました。
1年 / 3 年の予約容量購入により、コストを削減できるケースがあります。
SQL Server 2022 を組み合わせたオンライン DR 環境の構築
SQL Server との Managed Instance Link の機能を SQL Server 2022 と組み合わせた場合の双方向フェールバックの機能が Public Preview として提供されました。(今までは Private Preview でした)
詳細については Managed Instance のリンクの概要 に記載されており、以下の二つの機能をプレビューとして利用することができるようになりました。
- Managed Instance を起点として SQL Server 2022 へリンク作成
- SQL Server 2022 CU10 (2023/11 リリース) から利用可能
- SQL Server 2022 と Managed Instance 間のオンラインフェールバック
- SQL Server 2022 RTM で利用可能だが、SSMS 19.2 が必要
Purview の DevOps ポリシーの一般提供開始
Purview の DevOps ポリシーを使用したデータベースロールの割り当て機能の一般提供が開始されました。
無償トライアルの提供 (プレビュー)
近日のプレビューとなっているため、個別のアナウンスは見当たらず、上記のアップデートのサマリーに含まれている形になりますが、近日中にプレビューとして、Managed Instance の無償トライアルが提供されることになりました。
- 12 ヶ月の期間
- 4 または 8vCore のコンピュートに対して 720 時間分の vCore 時間
- 64 GB のストレージとバックアップストレージ
- インスタンスの開始 / 停止をサポート
このような環境を無償トライアルとして使用することができるようになります。
720 時間分の vCore 時間ということなので、4 vCoreの場合は 180 時間 / 8vCore の場合は 90 時間起動しておくことができるのではないでしょうか。
停止と開始をうまく活用して必要な場合にのみ起動することで、720 時間を効率的に活用する形になるのではないでしょうか。
Synapse Analytics
Synapse Analytics の今後について
Microsoft Fabirc の一般提供の開始がアナウンスされました。
機能領域としては Synapse Analytics と重複するものがありますが、Synapse Analtyics の今後についても触れられている情報が公開されています。
Microsoft Fabric は SaaS / Synapse Analytics は PaaS という違いがあり、Synapse Analytics については現時点では廃止の予定はないということがアナウンスされています。
Azure Arc enabled SQL Server
Azure Arc による SQL Server の管理の機能向上
- The Bridge – How Azure Arc brings cloud innovation to SQL Server anywhere
- Announcing Arc Jumpstart vNext
- Bringing Cloud Operations & Management innovations anywhere! #MSIgnite2023
Azure Arc 対応 SQL Server を使用した様々な場所で起動している SQL Server の管理について、機能が向上しました。
向上した機能については、上記のアナウンスや リリース ノート – Azure Arc 対応 SQL Server の 11 月のアップデートに記載されています。
- Azure から自動バックアップの構成
- Azure から PITR の実行
- SQL Server のパフォーマンスダッシュボード
- Always On 可用性グループの管理
- プライベートエンドポイントのプロキシのバイパス
というような機能が追加されています。
機能については、Standard / Enterprise, SA / PAYG で使用した, Windows の SQL Server を使用している場合にのみ利用できるものがあり、Developer Edition では検証できないものがありますので、利用可能なエディションには注意しておく必要があるのではないでしょうか。
Azure Stack HCI
Azure Stack HCI 23H2 の提供開始 (プレビュー)
Azure Stack HCI 23H2 がプレビューで提供開始されました。
従来までは Windows Admin Center を使用して Azure Stack HCI クラスターを構築していたものが Azure ポータルで構築するようになり、初期の構築時に Arc リソースブリッジも展開されるようになったようです。また、Azure Arc VM 管理 が 23H2 の機能となっているようです。
リソースブリッジを使用した機能については、23H2 ベースで再度検証を実施したほうが良さそうですね。