SQL Server 2022 Standard / Enterprise では、従量課金 (PAYG) による SQL Server の利用が可能となり、従来の永続ライセンス (一括購入) の利用形態だけでなく、使用時間に応じた PAYG による利用が可能となりました。
本ブログでも次のような投稿でも SQL Server 2022 の PAYG について触れてきました。
この PAYG の仕組みについて、SQL Server 2022 だけでなく SQL Server 2012 以降も対象となる機能追加が、2023/1 から Azure Arc 対応 SQL Server で行われました。(SQL Server の従量課金制 では 2014 以降となっていますが、2012 以降が正しいと思います)
従量課金制 (PAYG) ライセンス オプションが SQL Server 2012 以降に拡張されました
2012~2019 を対象とした PAYG についてはまだ情報を確認している最中ですが、現状確認ができていることをまとめておきたいと思います。本利用形態はまだ情報が少ないので今後 MS の公式情報も増えていくのではないでしょうか。
Contents
PAYG を利用するための設定
SQL Server 2012~2019 の PAYG については、冒頭に記載したドキュメントも含めた、次の内容で触れられています。
最新の Azure Arc 対応 SQL Server では、エージェントを導入し、Arc に接続を行う場合には、次のライセンスタイプを選択することができるようになります。
これは、Azure Arc 対応サーバーで「接続された登録」をサポートする 2012~2019 でも同様です。(接続後にライセンスタイプを変更することもできます)
従来からの永続ライセンスは「LicenseOnly」となり、こちらを選択した場合には、SQL Server のソフトウェアライセンスについては従来通りの利用となります。
「PAYG」を選択した場合は、2012~2019 を使用した場合でも PAYG による従量課金の利用となり SQL Server 2022 の PAYG による従量課金の仕組みを把握する 相当の従量課金が行われます。
2012~2019 の PAYG の設定については、エージェントを導入し Azure Arc 対応 SQL Server として接続を行うタイミングで設定することになります。
PAYG の想定利用シナリオについて
SQL Server 2022 と 2012~2019 の PAYG の最大の違いは「2012~2019 の PAYG は新規インストール時を想定したものではなく、インストール済み環境を PAYG に変更する」ことを目的とした機能となることです。
SQL Server 2022 であれば、新規インストール時に PAYG による利用を行うか、永続ライセンスのライセンス購入済みでプロダクトキーを入力するかを選択することができ、PAYG で利用する場合にはプロダクトキーは不要でインストールをすることができます。
しかし、新規インストール時のこのオプションについては 2012 ~ 2019 ではサポートされていません。
2012 ~ 2019 では前述のとおり、次の手順で PAYG に変更をすることになります。
- プロダクトキーを使用して SQL Server を新規インストールする
- ライセンス購入済みの必要がある
- Azure Arc 対応サーバーのエージェントを導入し、接続時に PAYG ライセンスで接続を行う
- 以降は PAYG ライセンスでコストが発生する
冒頭で記載した「2012~2019 の PAYG は新規インストール時を想定したものではなく、インストール済み環境を PAYG に変更する」が PAYG を使用することでメリットを享受できるかどうかのポイントとなってきます。
私が携わる案件では、SQL Server のソフトウェアライセンスについては永続ライセンスのものしか使用する機会は無かったのですが、SQL Server のライセンス購入形態については、次のようなものがあるかと思います。(これ以外にもあるかもしれませんが)
- 永続ライセンス
- 一般的な永続ソフトウェアライセンス購入
- 年間サブスクリプション
- EA 契約による初回 3 年間の利用 + 以降更新
- SPLA
これらのライセンス購入方法で 2012~2019 を使用している場合に、PAYG を使用することでどのようなメリットが享受できるかが本機能活用のポイントとなるのではないでしょうか。
永続ライセンスに対してのメリット
永続ライセンスで購入している場合、PAYG を利用したほうが良いシナリオとしては、「追加のコアパック購入が必要となった」場合があるのかと思います。
CPU コア数の増強が必要となった場合、増強するコアに応じたコアラインセンスの購入が必要となってきますが、PAYG で利用する場合には、ライセンス購入は不要で PAYG に設定することで、環境で搭載しているコア数を使用するライセンスに即時切り替えることができます。
PAYG を使用することでコア数の増強を行う場合に、コアパック購入という手続きをとる手間が省略できるのではないでしょうか。
年間サブスクリプションに対してのメリット
年間サブスクリプションでの利用の場合、契約更新のタイミングでは 1 年単位で更新が必要になっていたかと思います。
PAYG は、1 時間単位のサブスクリプション利用となるため、年間サブスクリプションより短い期間でのコストの発生単位に切り替えわることで、より細かなコストの利用形態に切り替えることができます。
ピークタイム時のアクセス数の減少やサービス縮小等で使用する CPU コア数が減った場合にも、PAYG であれば実際に割り当てられているコア数ベースでコストが発生しますので、使用するコア数が減った状態に応じてコストを抑えることもできるかと。
また、常に起動していなくてはいけない環境ではコスト削減にはなりませんが、一時的に SQL Server のサービスを停止していることができる時間帯 / 期間が存在するのであれば、PAYG のほうがコストを抑えることができる可能性があります。
Azure Arc 対応 SQL Server に関するよくあるご質問 に記載されていますが、PAYG はサーバーの起動時間ではなく、SQL Server のサービスが起動している時間に応じての課金となりますのでサーバーの停止 / SQL Server のサービスが停止している時間はコストが発生しなくなりますので、これをうまく活用することができると、コストの削減につながる可能性があります。
既存のコアライセンスに対しての考慮はあるか?
永続ライセンス / 年間サブスクリプションのどちらも「既存のコアライセンスを保有している」状態となります。
2012 – 2019 の PAYG での利用は新規インストールは対象としていないため、上記の利用形態から変更することになりますが、PAYG 出のライセンス利用については既存で保有しているライセンスは考慮されないとのことです。
4 コアライセンスで現在 SQL Server を実行している場合、8 コアの PAYG での利用に切り替えた場合、新規に 8 コア分のコストが発生することになります。
残念ながら既存の 4 コアを利用しながら追加分の 4 コアのみ課金を発生させるということはできないそうです。
そのため PAYG に切り替える場合には、PAGY のコアラインセスがすべて新規に発生するということを考慮しておく必要があります。
まとめ
2012~2019 の PAYG については既存ライセンス購入済み環境を PAYG に切り替えるという利用方法となります。
永続ライセンスのまま構成を変えることがない場合には、PAYG に切り替えるメリットはないかと思いますが「コア数 / 稼働時間に応じたコスト発生に柔軟に切り替えることができる」ことがメリットとなる運用ができるのであれば、PAYGによる利用のほうが利便性が高いケースも出てくるのではないでしょうか。