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Managed Instance のロードマップ (2020/5 版)

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Build 2020 のセッションでは、発表はなかったようなのですが、先月開催されていた、DataPlatformGeeks Virtual Symposium ので Start modernizing your workloads at scale with Managed InstanceSQL Database Managed Instance (マネージドインスタンス) のロードマップが公開されました。

このセッションで、どのような機能強化が予定されているのかが発表されたのかをまとめておきたいと思います。

現時点で実装されている機能については、次のようになっています。

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パフォーマンスとスケール

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パフォーマンス面では、汎用目的とビジネスクリティカルの両方でトランザクションログの書き込みレートの改善が予定されているようです。

どちらのサービスレベルでも、トランザクションログの書き込み性能には上限があり、Overview of Azure SQL Managed Instance resource limits で上限について公開されています。

トランザクションログの書き込み制限については、次のようになっています。

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SQL Database の Single データベースモデルについての上限は、Resource limits for single databases using the vCore purchasing model に記載されているのですが、Managed Instance については、Single データベースより、ログ書き込みの性能が低くなっているのが現状の性能上限となっています。

このトランザクションログの書き込み性能の改善が予定されており、数倍のログ書き込み性能が発揮できるようになるようです。

他にも Hyperscale のサービス層が Managed Instance でも利用可能となるようです。
構成についても、セッション内で紹介されていたのですが、基本構成については Single Database と同様の構成となるようです。
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現時点では、汎用目的で 8TB、ビジネスクリティカルで 4TB が、データベースサイズの上限となっていますが、Hyperscale が提供されることで、この制限が 100TB まで緩和され、現状より大きなデータベースを Managed Instance 上にホストすることができるようになります。
(この 100TB が DB 単位の上限なのか、インスタンス内での上限なのかは現時点では情報が公開されていないかと)

読み取り専用レプリカ (Read Replica) についても複数台設定できるようになりますので、読み取りワークロードの分散も可能となります。

 

 

最新の開発シナリオとアプリの互換性の向上

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複数のインスタンスに対しての処理については、次の 2 つの機能の実装が予定されているようです。

  • 分散トランザクション
  • Service Broker

実装されることで、これらの機能を使用している環境の Managed Instance への移行容易性が向上します。

移行性については、SSRS のデータベースを Managed Instance でホストする対応も検討されているようです。
SSIS の DB と SSRS の DB として Managed Instance を使用することができるようになりますね。

SSIS の DB については、ADFv2 のデプロイメントモデルについてもサポートされるということです。
(SSIS 周りはあまり追っていないので、これがどのようなことなのかがいまいちわかっておらず)

SQL Server 2019 で機能強化されている データ仮想化 の機能についても Managed Instance への実装が予定されています。
これにより、Azure 上の Data Lake に格納されたデータを Managed Instance の参照対象とすることが可能となります。

データ仮想化については、別のスライドでも解説が行われていました。
アクセス可能なデータソースの詳細な公開はなかったように見えたのですが、BLOB 上のデータを Managed Instance を使用して分析を行うパターンについては利用することができるようです。
(RDBMS や、Mongo DB に対してのアクセスが可能なのかは今後の情報待ちかと)

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データの分析としては、ML Service の R / Python のサポートも予定されているようです。
これにより、分析を実施する際の手段の選択性が向上することになります。

 

 

可用性と信頼性の向上

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現状、Managed Instance のデプロイには時間がかかり、現在、どのような展開のフェーズが進行中なのかを確認することができません。

実行されているアクションが公開されることで、デプロイにかかる時間を予測可能にするというような改善が行われる用です。
新規展開はもちろんですが、汎用目的とビジネスクリティカルを切り替えようとした場合に、現在どのようなステップが行われているかを確認し、残りの作業を予測するというような利用も検討することができるようです。

運用面では、メンテナンスウィンドウや通知面での改善も進められています。
フェールオーバーを伴うようなアップデート等で、アプリケーションのワークロードが中断されないように、インスタンスのメンテナンスの実行を行うタイミングのスロットを選択できるようにすることで、環境の維持/メンテナンスによるワークロードの中断が発生する可能性を予測できるようにすることができます。
メンテナンスの通知についても改善が行われるようです。

バックアップについては、長期保存バックアップが利用できるようになり、現状のデータベースの保持期間の上限は、35 日なのですが、機能の実装後は、10 年間のバックアップ保持が可能になるようです。

高速データベース復旧 (ADR) の機能の実装も計画されており、実装されることで、長時間のトランザクションのロールバックや、フェールオーバー時の回復の高速化、積極的なトランザクションログの切り捨てが可能となり、問題が発生した場合の回復時間の大幅な改善が行われます。

 

ネットワークセキュリティと接続性

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DNS エイリアス により、Managed Instance への接続をエイリアス経由に変更することが可能となります。
Managed Instance に接続を行う場合、接続文字列を Managed Instance に向ける必要があります。

DNS エイリアスを使用することで、一度は DNS エイリアスに接続先を向ける必要がありますが、以降の接続先の切り替えは、DNS の設定変更で実施できるようになるため、接続先の切り替えの利便性が向上するケースがあるのではないでしょうか。

セキュリティ面では、Azure ストレージの サービスエンドポイントポリシー にも対応することで、セキュリティの向上もできるようです。

 

接続については、グローバルピアリングの対応が検討されています。
現状、Managed Instance はグローバル VNET ピアリングはサポートしていないため、VNET のピアリングは同一リージョン内のみに限定されています。

他のリージョンの仮想ネットワークからの接続や、フェールオーバーグループ を利用する場合には、VPN ゲートウェイ経由での接続を検討する必要があります。
(Managed Instance は異なるリージョンに対してのみ、フェールオーバーグループが設定可能です)
グローバルピアリングがサポートされることで、VPN ゲートウェイを使用せずに柔軟なネットワークの構成、Azure バックボーンのネットワークの通信により、他リージョンの環境へのネットワークスループットの改善が期待できます。

ネットワークの柔軟性については、MI のサブネットの他のリソースでの利用も検討されており、MI 専用のサブネットを作る必要がなくなることでの、ネットワーク構成の柔軟性の改善もあるようです。

 

Managed Instance への移行容易性

 

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大きな内容としては、ハイブリッドな分散型可用性グループによる、SQL Server からのデータ同期があります。

オンプレミスの SQL Server の可用性グループのレプリカとして Managed Instance を設定できるようになるようです。

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これにより、クラウド移行を実行する際のデータベースの移行に AlwaysOn 可用性グループを利用する、DR 等の用途に Managed Instance を使用するというようなシナリオを検討することができるようになります。
(追加の効果にビジネスクリティカルのオンライン移行と記載がありますので、連携先のサービス層は限定される可能性がありますが)

他にもトランザクションログの再生についての機能向上も予定されているようですので、データベースを移行する際のダウンタイムを抑える移行方法の検討を行うことができるのではないでしょうか。

 

今後の Managed Instance の機能改善については、このような内容が検討されているようです。
個人的には、Hyperscale とハイブリッドな分散型可用性グループが興味深いですね。

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Written by Masayuki.Ozawa

6月 7th, 2020 at 9:27 pm

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